夏目漱石 『虞美人草』 「ただ年を取って心細いから……たった一人の…

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青空文庫図書カード: 夏目漱石 『虞美人草』

現代語化

「ただ年を取って寂しいから……藤尾を一人にしてしまうと、後が困るんだよね」
「なるほど」
「でなければ一回がいいんだけどね。お前とも仲がいいし……」
「母ちゃん、小野さんってよく知ってるんですか？」
「知ってるつもりよ。礼儀正しくて、優しいし、学問もできて立派な人じゃない？――なんで？」
「それならいいです」
「そう簡単に言わないで、何か考えてることあるなら教えてよ。せっかく相談しに来たんだから」

原文 (会話文抽出)

「ただ年を取って心細いから……たった一人の藤尾をやってしまうと、後が困るんでね」
「なるほど」
「でなければ一が好いんだがね。御前とも仲が善し……」
「母かさん、小野をよく知っていますか」
「知ってるつもりです。叮嚀で、親切で、学問がよく出来て立派な人じゃないか。――なぜ」
「そんなら好いです」
「そう素気なく云わずと、何か考があるなら聞かしておくれな。せっかく相談に来たんだから」

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