谷崎潤一郎 『痴人の愛』 「そう使っちゃ晦日が越せなくなるじゃないか…

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青空文庫図書カード: 谷崎潤一郎 『痴人の愛』

現代語化

「そんな使い方してたら年末年始を乗り切れないじゃない」
「乗り切れなければ、待ってもらえばいいよ」
「…何年も一緒に住んでおきながら、年末年始の支払いを延ばせないなんておかしいわよ。半期ごとに必ず払うって約束すれば、どこでも待ってくれるはずよ。譲治さんは小心者で融通が利かないのよ」
「私そんなこと言いたくない。それは男の役目でしょ」

原文 (会話文抽出)

「そう使っちゃ晦日が越せなくなるじゃないか」
「越せなければ、待って貰えばいいわよ」
「―――三年も四年も一つ所に住んでいながら、晦日の勘定が延ばせないなんて法はないわよ、半期々々にはきっと払うからって云えば、何処でも待つにきまっているわ。譲治さんは気が小さくって融通が利かないからいけないのよ」
「あたしそんなこと云うのは厭だわ、それは男の役目じゃないの」

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