芥川龍之介 『戯作三昧』 「第一私が無理に書いたつて、どうせ碌なもの…

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青空文庫図書カード: 芥川龍之介 『戯作三昧』

現代語化

「第一私が無理に書いたって、どうせろくなものはできないよ。それじゃ売れ行きが悪くなるのは言うまでもないことだから、あなたの方だってつまらないだろう。そうすると、これは私の無理を通させた方が、結局両方の得になると思うんだけど」
「でございますが、そこを一つご奮発願いたいんです。いかがでしょうか」
「なだめられた」
「とても、書けませんよ。書きたいけど、時間がなくて、仕方ないんです」
「それは困りますな」

原文 (会話文抽出)

「第一私が無理に書いたつて、どうせ碌なものは出来やしない。それぢや売れ行きに関るのは云ふまでもない事なのだから、貴公の方だつてつまらなからう。して見ると、これは私の無理を通させる方が、結局両方の為になるだらうと思ふが。」
「でございませうが、そこを一つ御奮発願ひたいので。如何なものでございませう。」
「撫で廻した。」
「とても、書けないね。書きたくも、暇がないんだから、仕方がない。」
「それは手前、困却致しますな。」

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