三遊亭圓朝 『敵討札所の霊験』 「一寸お前」…

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青空文庫図書カード: 三遊亭圓朝 『敵討札所の霊験』

現代語化

「「おい」

「お帰りなさい」

「いや、帰りに武田さんに寄ってきた」

「あら、だいぶ遅かったので、どこかにお立ち寄りになったんだと思ってました」

「ちょっと嬉しい話がある」

「はい」

「ちょっと聞けよ。君も知ってる通り、去年子供があれになって、俺ももう仕事が辛いし、気が抜けてきたから、照に養子でも取って、隠居してのんびりしたいと思ってたんだ。でも、養子を取らなきゃと思ってたら、なんと武田の舎重二郎が養子になることが決まったんだ」

「わあ、それはなんて素晴らしいことなんでしょう。屋敷でも評判がいい孝行者で、武芸も学問もあんなにできる人はいませんよね」

「それに、あいつは武田流の軍学もよくできるし、剣術は真影流の名人、文学もできる。役に立つのはもちろんだけど、継母に育てられてるからしっかりしてるし、武芸も学問も年寄りも敵わないくらいすごい。こんな養子はそうそういないだろうね。本当にありがたい話だ。さっさと照を呼んできな」

「はい。お照さん、ちょっとこっちにいらっしゃい。お父様が帰ってきたよ。さあ、こっちに来て」

原文 (会話文抽出)

「一寸お前」
「お帰り遊ばせ」
「いや帰りにね武田へ寄って来た」
「おや、大分お帰りがお遅うございますから、何処かへお立寄と存じまして」
「少し悦ばしい話があるが」
「はい」
「斯う云う訳だが、予てお前も知っての通り、昨年悴が彼アいう訳になって私も最う勤は辛いし、大きに気力も衰えたから、照に何な者でも養子をして、隠居して楽がしたい訳でもないが、養子を致さんではと思って居た処が、幸いと武田の舎重二郎が養子になるように相談が極ったよ」
「おやまアそれは何うも此の上もない事でございます、お屋敷中でも親孝行で、武芸と云い学問と云い、あんな方はございません、評判の宜い方でござりますねえ」
「それに彼は武田流の軍学を能くし、剣術は真影流の名人、文学も出来、役に立ちますが、継母に育てられ気が練れて居て、如何にも武芸と云い学問と云い老年の者も及ばぬ、実に彼のくらいの養子は沢山あるまい、此の上もない有難い事でのう、早く照をお呼びなさい」
「はい、お照や一寸此処へお出で、お父様がお帰りになったよ、さア此処へお出で」

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