太宰治 『惜別』 「いや、僕こそ、しつれいしました。」…

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青空文庫図書カード: 太宰治 『惜別』

現代語化

「いや、私こそ、失礼しました。」
「まあ、こんなところかな?」
「僕はどうも、景色にインポテンツなのか、この松島のどこがいいのか、さっぱり見当がつかなくて、さっきからこの山をうろうろしていたのです。」
「僕にも、わかりません。」
「しかし、だいたいわかるような気がします。この、静かさ、いや、静けさ、」
「シレンティウム、」
「あまりに静かで、不安なので、唱歌を声高く歌ってみましたが、だめでした。」
「静かすぎます。何か、もう一つ、欲しい。」
「春は、どうでしょうか。海岸の、あのあたりに桜の木でもあって、花びらが波の上に散っているとか、または、雨。」
「なるほど、それならわかります。」
「どうも、この景色は老人向けですね。あんまり色気がなさすぎる。」
「いや、これが日本の色気でしょう。何か、もう一つ欲しいと思わせて、沈黙。ジットザムカイト、本当にいい芸術というのも、こんな感じのものかもしれませんね。しかし、僕には、まだよくわかりません。僕はただ、こんな静かな景色を日本三景の一つとして選んだ昔の日本の人に、驚嘆しているのです。この景色には、少しも人間の匂いがありません。僕たちの国の者には、この淋しさはとても我慢できないでしょう。」
「お国はどちらですか?」
「東北じゃありませんか。そうでしょう?」
「私は中国です。知らないはずはありません。」
「ああ。」

原文 (会話文抽出)

「いや、僕こそ、しつれいしました。」
「まあ、こんなところかな?」
「僕はどうも、景色にイムポテンツなのか、この松島のどこがいいのか、さっぱり見当がつかなくて、さっきからこの山をうろうろしていたのです。」
「僕にも、わかりません。」
「しかし、だいたいわかるような気がします。この、しずかさ、いや、しずけさ、」
「Silentium,」
「あまりに静かで、不安なので、唱歌を声高く歌ってみましたが、だめでした。」
「静かすぎます。何か、もう一つ、ほしい。」
「春は、どうでしょうか。海岸の、あのあたりに桜の木でもあって、花びらが波の上に散っているとか、または、雨。」
「なるほど、それだったらわかります。」
「どうも、この景色は老人むきですな。あんまり色気が無さすぎる。」
「いや、これが日本の色気でしょう。何か、もう一つ欲しいと思わせて、沈黙。Sittsamkeit, 本当にいい芸術というのも、こんな感じのものかも知れませんね。しかし、僕には、まだよくわかりません。僕はただ、こんな静かな景色を日本三景の一つとして選んだ昔の日本の人に、驚歎しているのです。この景色には、少しも人間の匂いが無い。僕たちの国の者には、この淋しさはとても我慢できぬでしょう。」
「お国はどちらです。」
「東北じゃありませんか。そうでしょう?」
「僕は支那です。知らない筈はない。」
「ああ。」

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