横光利一 『旅愁』 「そうそう、久木さんにさきからお訊きしたい…

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青空文庫図書カード: 横光利一 『旅愁』

現代語化

「そうそう、久木さんにちょっと前からお聞きしたいと思ってたんですけど、矢代さんの説によると、御幣と数学の集合論の中心部分って同じらしいんですがね、久木さんは数学の専門だから、その集合論の概念をちょっと教えてもらおうかと思ってたんですけど。」
「はて、それってどういうことなんですかね――」
「矢代さん、矢代さん、あなたのその説ってどういうことですか？」
「いや、僕もうまく説明できないんですよ。」
「あなたは今夜はおとなしいですね。きっと海沿いを歩いて、船の明かりを見て、昔を思い出したんでしょ？」

原文 (会話文抽出)

「そうそう、久木さんにさきからお訊きしたいと思っていたのですが、矢代君の説によると、御幣と数学の集合論の中心部分が等しいというのですがね、久木さんは数学の御専門だから、その集合論の概念を一つと思っていたのですよ。」
「はて、何んですかね、それは――」
「矢代さん、矢代さん何んですそのあなたのお説というのは。」
「いや、僕もよく知らないんですよ。」
「あなたは今夜はまた馬鹿にお静かですね。さてはそこから船の灯を見て、思い出したのですか。」

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