横光利一 『旅愁』 「僕の大学時代の学友で、数学の専門家があっ…

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青空文庫図書カード: 横光利一 『旅愁』

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「俺の大学の友達で、数学の専門家がいたんだけど、段々修業してるうちに仙人のようになってきちゃってね。断食とか余裕になって、いつだって地獄や天国を見たりできるようになったヤツがいたよ。禊(みそぎ)もよく一人でやってたみたい。あいつの話だと、断食なんて何てことないらしいんだ。ただやる時に、大そうなことしようなんて思うとダメなんだって。そんなこと考えてると、途中で病気になったり死んだりするんだってさ。いつも毎日やってることを、今日もやるんだと思って、普通にしてると、簡単にできるんだらしいんだけど、それは俺にいろんなヒントをくれて良かったよ。」
「地獄や天国が見えるのかよ。それは最高だな。でも、どうしてそんな人間が、そのまま断ちきれずに人に伝わらないんだろう?後継者がいないのはもったいないだろ。」
「何だって、そういう人間は生まれつき素質があって、自分でも知らなくても、頭の後ろに円光が輝いてるらしいんだよ。ここにいるヤツらは、まあ全員落第だな。見た感じ、誰も円光は見えないよ。」
「もしかしたら、幣帛(へいはく)だってそういう人が、何かの暗示で白い紙を切ったのかもしれないね。そうでなきゃ、ただの紙がそんなに長く続くわけないからさ。」
「俺は数学ってのは、そういうものだと思うよ。目的も私心もない、その無目的な美しさに魅力があるんだと思う。」

原文 (会話文抽出)

「僕の大学時代の学友で、数学の専門家があったが、それがだんだん修業しているうちに、仙人になって来てね。断食なんか平気になったり、いつでも地獄や天国を見たり出来るようになった男があったよ。みそぎもよく一人でやっていたな。その男の云うことだと、断食なんて、何んでもないもんだそうだ。ただそれをやるときにだね、一大事をやるように人が思うが、そうするともう駄目だと云うのだ。そんなことを思ったりしちゃ、途中で死んだり病気したりすると云うのだ。いつも毎日やることを、今日もやるんだと思って、平然とやると、らくらくと出来るらしいんだが、それは僕にいろいろ暗示を与えてくれて良かったね。」
「地獄や天国が見えるのかね。それはいい。しかし、またどうしてそんな人間が、そのまま断ち切れて人に伝わらないのかね。後が続かなくちゃ勿体ないじゃないか。」
「何んでもそれは、そんな人間は素質が初めからあって、自分が知らなくても、ぽッとその者の頭の後に円光がさしているらしいんだよ。ここにいる者らは、まア皆落第だね。見たところ、誰も円光は見えないよ。」
「もしかしたら、幣帛だってそういう人が、何かの暗示で白紙を切ったのかもしれませんね。そうでなければ、そう長くただ一枚の紙がつづくものじゃないからな。」
「僕は数学というものは、そういうものだと思いますよ。これは無目的で、私心がないというその無目的な美しさが美しいんだと思う。」

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