横光利一 『旅愁』 「栄えるためには、人は何ものかに殺されねば…

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青空文庫図書カード: 横光利一 『旅愁』

現代語化

「栄えるためには、人は誰かに殺されなきゃいけないのかもしれない。君みたいに」
「歴史は繰り返すのか、進むのか僕にはわからないけど、たぶん君の亡骸の悲しみも、いつか何かの役に立つ日が来ることを願ってる。日本に帰ってからの僕の考えは、今のところ、歴史は繰り返さず、ただ進むだけだと信じたいってことだけだ。でも、人間の腸のうねりのような歴史は、たぶん僕らの祈りなんて聞いてくれないだろう。だけど、もう僕は何も心配してない。僕も君も、野蛮人というような高級な感性的なものにもなれなかったし、知性人というような、これまた同様に透明な抽象的なものでもなかった。それなら僕らはお互いに最も底辺にいるべき人間同士で、この底辺という富くじを引き当てた健康なものこそ、それだからこそここに最も真理が豊かにあることを自覚すべきなんだ。なぜなら結局この底辺の僕らが世の中を動かしてるからだ。そして、僕はこの自覚から楽しく出発するつもりだよ。ここに僕らの道徳があると思う」
「あっ」
「やあ、久しぶり。一昨日着いたんだよ。元気だった?」

原文 (会話文抽出)

「栄えるためには、人は何ものかに殺されねばならぬのかもしれない。君のように。」
「歴史は繰り返すのか、進むのか僕には分らないが、恐らく君の亡き骸の悲しみも、何かの役目を果す日の来ることを僕は希い、またそれを祈っている。日本へ帰ってからの僕の念いは、今のところ、歴史は繰り返さない、ただ進むばかりだと信じたいことだけだ。しかし、人間の腸のうねりのような歴史は、恐らく僕らの祈りなど、聞き届けてくれないことと思う。だが、何んにも僕は心配などもうしていない。僕も君も、どちらも野蛮人というような高級な感性的なものにもなれず、知性人というような、これまた同様に透明な抽象的なものでもない。それなら僕らはお互に最も底辺にいるべき人物同志であり、この底辺という富み籤を引き当てた健康なものこそ、それなればこそここに最も真理が豊かにあることを自覚すべきである。何ぜなら所詮この底辺の僕らが人の世を運ぶのだからだ。そして、僕はこの自覚から楽しく出発するつもりだ。茲に僕らの道徳がある筈だと思う。」
「あっ」
「やア、暫くでした。一昨日着いたんですよ。御無事でしたか。」

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