横光利一 『旅愁』 「今日はこれだけにしときましょう。」…

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青空文庫図書カード: 横光利一 『旅愁』

現代語化

「今日はこの辺にしときますね。」
「ありがとう。で、研究費は1時間いくらですか？」
「クジさんの時は20フランだけど、あなたのは10フランにしますよ。」
「それはありがとう。」
「あたしの発音って、まだまだ完璧じゃないの。パリの人の発音はまだほとんどダメ。やっぱり、一度ギャストンバッチの女優学校でも入って、正しい発音を習わないと、信用できないわ。」
「そうなんですか。でも、日本にだって日本語の完璧な発音なんてどこにもないですよ。東京の人だって結局、東京の方言を使ってるわけですから。」

原文 (会話文抽出)

「今日はこれだけにしときましょう。」
「ありがとう。それから研究費は一時間幾らです。」
「久慈さんのは二十法ですが、あなたのは十法にしときますわ。」
「それはありがとう。」
「あたしの発音法はこれでまだ完全じゃないのよ。パリの人の発音はたいていはまだ駄目。やはり、一度ギャストンバッチの女優学校へでも這入って、正規の発音を習わなきゃ、信用出来ないわ。」
「そういうものですかね。しかし、日本にも日本語の完全な発音なんかどこにもないですよ。東京の者だって、つまりは東京の方言を使っているんですからね。」

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