横光利一 『旅愁』 「フランスの田園の美しさは、世界一だと威張…

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「フランスの田舎の美しさは世界一だって偉そうに言ってるけど、なるほど、これじゃ偉そうに言われても仕方ないな。」
「こんなに綺麗だと、見る気もしないや。これじゃ、パリはどんだけ綺麗なんだろうね。」
「さっきから見てるけど、鉄道の両側に広告が一つもないね。バターの広告がたった一つあるだけだ。村も日本の十分の一もないけど、これで都会の文化が発達したんだね。」
「フランスは自分の国で食べる分は自国内にあるんだから、植民地の金から軍備費だけは、たっぷり出せるだろうね。」
「でも、僕らがヨーロッパ、ヨーロッパって騒ぎたてるのは、騒いだ理由が確かにあったね。自分の国を良くしたいと思うのは普通のことだけど、騒ぎすぎると、そのうち必要のない感情まで出てきちゃうのが怖いよ。」
「そうだね、国ってものを考え出すと、僕ら医者も精神的に苦労するよ。でも、あなたみたいに感情を出したら、患者さんが死んじゃう。」
「でも、医者だって、人を助けるって感情があるからでしょ?へたな医者ならともかく、無情だと患者さんが可哀想だよ。あなたがドイツに行って勉強してきて、薬の量をそのまま日本人に使うの?危なっかしいよ。」
「いや、医者ってのはね、死にたがってる人間でも、生かさなきゃいけないんだよ。」

原文 (会話文抽出)

「フランスの田園の美しさは、世界一だと威張っているが、なるほど、これじゃ威張られたって、仕様がないなア。」
「こんなに綺麗だと、見る気もしないや。これじゃ、パリはどんなに美しいのかね。」
「さきから見てるんだけれど、鉄道の両側に広告が一つもないな。バタの広告がたった一つあるきりだ。村も日本の十分の一もないが、これで都会文化が発達したのだね。」
「フランスは自国民の食うだけのものは、自国内にあるんだから、植民地の蔵から軍備費だけは、充分出ようさ。」
「しかし、われわれがヨーロッパ、ヨーロッパと騒いで来たのは、騒いだ理由はたしかにあったね。いったい自分の国を善くしたいと思うのは人情の常として、誰にでもあるものだが、騒ぎすぎると、次ぎには要らざる人情まで出て来るのがそれが恐いよ。」
「それやね、国というものを考え出すと、われわれ医者も生理的に苦労をするよ。しかし、まア、君のように、人情を出しちゃ、病人が死んでしまう。」
「しかし、医者だって仁術という人情があろうからなア。藪医者ならともかくも、非人情じゃ病人こそ災難だ。あなたがドイツへ行かれて勉強して来て、薬の分量をそのまま日本人に使うのですか、危いもんだねそれや。」
「いや、医者はね、死にたくて溜らぬ人間でも、生かさなくちゃならんのだよ。」

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