コロレンコ Vladimir Galaktionovick Korolenko 森林太郎訳『樺太脱獄記』 「どうだつたい。いよ/\出発となつた時は、…

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青空文庫図書カード: コロレンコ Vladimir Galaktionovick Korolenko 森林太郎訳『樺太脱獄記』

現代語化

「どうだった。いよいよ出発した時は、いい気持ちだったろうね」
「いい気持ちっていうか。低い木の間から、高い木ばかりが並んでる森に入って、木の枝がざわざわいうのを聞いた時は、生まれ変わったような気持ちでしたよ。仲間は、みんな勇んでました。その中でブランだけはうつむいて、何かわけの分からないことを口の中で言いながら歩いてるんです。どうも出発の時から、いい気はしてなかったらしいですね。どうせ遠い道を逃げ切ることができないのが、胸に分かってたんでしょう。少しするとみんな、案内人として頼りに思ってる爺さんが、どうも頼りにならないような気がしてきました。もちろん流浪人になって年を取った男ではありますし、もう2度もこの島から脱走したことがあるのですから、道などは心得てます。でも私や、友達のヲロヂカが見るところでは、爺さんが頼りなく見えてきたんですね。ある時ヲロヂカが私に言いました。「今に見ろ。ブランのせいで、俺たちはひどい目に合うぜ。どうもあいつは変だからな」
「どうも気が変になってるみたいだ。いろんな独り言を言って、首を振ったり、合点合点したりしてる。指示も何もしてくれない。もうさっきから小休憩してもいい頃になってるのに、あいつはどんどん歩いてる。どうも変だぜ」
「どうだね、あまりに急ぎすぎるんじゃないか、少し休んだらどうだろう」
「待て待て。そんなに急いで休むことはない。どうせワルキかポギバに行けば、お前たちはみんな弾を食うんだ。そうすれば、いつまでも休まれる」

原文 (会話文抽出)

「どうだつたい。いよ/\出発となつた時は、好い心持だつたらうね。」
「それは好い心持ですとも。低い木の間から、高い木ばかりの揃つてゐる森に這入り込んで、木の枝のざわざわいふのを聞いた時は、生れ変つたやうな心持がしましたよ。同志の者は、みんな勇み起ちました。その中でブランだけは俯向いて、何か分からない事を口の中で言ひながら歩いてゐるのです。どうも出立の時から、好い心持はしなかつたらしいのですね。どうせ遠い道を逃げ果せる事の出来ないのが、胸に分かつてゐたのでせう。少し立つと皆が案内者として、頼みに思つてゐる爺いさんが、どうも頼みにならないやうな気がして来ました。勿論流浪人になつて年を取つた男ではあるし、もう二度もこの島から脱けた事があるのですから、道なぞは心得てゐます。併しわたくしや、友達のヲロヂカが見たところでは、爺いさんが頼み少なく見え出したのですね。 或る時ヲロヂカがわたくしに言ひました。「今に見ろ。ブランのお蔭で、己達はひどい目に逢ふぜ。どうもあいつは変だからな。」
「どうも気が変になつてゐるやうだ。色々な独話を言つて、首を振つたり、合点合点をしたりしてゐる。指図もなにもしてくれない。もうさつきから小休みをしても好い頃になつてゐるのに、あいつはずん/\歩いてゐる。どうも変だぜ。」
「どうだね、あんまり急ぎ過ぎるぢやないか、少し休んだらどうだらう」
「待て待て。そんなに急いで休む事はない。どうせワルキかポギバに行けば、お前達はみんな弾を食ふのだ。さうすれば、いつまでも休まれる。」

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