宮本百合子 『風知草』 「生きかえって来た、生きかえって来た」…

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青空文庫図書カード: 宮本百合子 『風知草』

現代語化

「生き返った、生き返った」
「何？」
「――私たちが……」
「でも、ひろ子の調子に、そんなに陽気なところなんてなかったよ」
「そうだった？――」
「そこが、つまりあなたが言う頑張りの情けなさなのよ、きっと。――でも、もうちょっと我慢してね、すぐなくなるから」
「あなただって相当強敵ですよ」
「一日中、あんな嫌な気持ちで仕事してたの、悪かったわね」
「そうでもないよ」
「家の近くへ来るにつれて、だんだん嫌な気持ちになったんだ」
「当然でしょ、そう考えると、もう本当は家なんてどこにもないんだもん」

原文 (会話文抽出)

「生きかえって来た、生きかえって来た」
「なにが？」
「――わたしたちが……」
「しかし、ひろ子の調子に、そんなユーモラスなところはなかったぜ」
「そうだったこと？――」
「そこが、つまりあなたのおっしゃるがんばりの情けなさなのね、きっと。――でも、もうすこしの御辛棒よ、じき無くなってよ」
「あなただって相当強襲なんですもの」
「一日じゅう、あんないやな気持で仕事していらしたの、わるかったわねえ」
「そうでもないさ」
「家の近くへ来るにつれて、だんだんいやな気持になったんだ」
「そりゃそうね、ああ思えば、もう本質的に家なんてどこにもないんですもの」

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