宮本百合子 『道標』 「なんてひとだろう！　そんなに僕を苦しめな…

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青空文庫図書カード: 宮本百合子 『道標』

現代語化

「なんであんなこと言うんだよ！　そんなに俺いじめることないじゃん」
「最初からわかってるんだよ、俺が佐々さんを愛してるみたいに愛してないってこと……だからって、バカにしないでよ」
「こっち来て」
「…………」
「お願い、来て」
「ダメ」
「なんで？」
「だって……違うんだもん」
「何が」
「――タワーリシチじゃないもん」
「じゃ、タワーリシチなら、何でもありってこと？」
「なんでそうなるのよ……」
「だって――そうでしょ」
「私はコロンタイストじゃないわ」
「俺のこと、タワーリシチじゃないって言うんだろ」
「そういうわけじゃないんだけど」

原文 (会話文抽出)

「なんてひとだろう！　そんなに僕を苦しめなくたっていいじゃないか」
「僕ははじめからよくわかっているんだ、僕が佐々さんを愛しているように愛していてはくれないんだ……だからって、侮辱しなくたっていい」
「こっちへ来て」
「…………」
「ね、来て」
「だめ」
「どうして？」
「だって……ちがうんだもの」
「何が」
「――タワーリシチじゃないもの」
「じゃ、タワーリシチなら、君にはどんな男でもいいわけか」
「どうしてそういうことになるのかしら……」
「だって――そういうわけでしょう」
「わたしはコロンタイストではないわ」
「僕は君にとってタワーリシチじゃないってわけなのか」
「それはそうじゃないの」

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