宮本百合子 『道標』 「つや子ちゃん」…

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青空文庫図書カード: 宮本百合子 『道標』

現代語化

「つや子ちゃん」
「あなた、もう今日はおやすみなさいよ、ね。明日来て、またリュクサンブールにでも連れてってあげるから……」
「お姉さん、帰る前に、ちょっとこの人のところによるの。――いい?忘れない?」
「忘れない。――だから寝てなさい。いい子」
「旅先でもあるし、お母さんもごたごたしたお気持ちなんだろうけど、私、お金のことについて、はっきりとさせておきたいのよ。今まで、お母さんとはいろんなことで言い合ったけど、お金について今夜のようにおっしゃったのは、初めてなんだから。今まで実際にあったことをありのままに考えてみて、お母さんは、私に対して、一度だって、出すだけは黙って出せ、って金を出したことはなかったと思うわ。そう思わない?」
「私から、お金をねだったことがあるかしら。佃と結婚したとき、お母さんは、自分の思うことをするのなら、経済的にもすっかり自分でやれって言ったでしょう。あれは、今になってみれば見るほどありがたかったと思っています。和一郎さんには、お母さんちょっと違うのよ。オートバイの時だって。ヴィクターの時だって。和一郎さんは、ねだって成功してきてるのよ。小枝ちゃんと結婚したい、とあの人が言ったときお母さんは、好きな結婚をするなら、何でも自分でやれ、とおっしゃったかしら。――そうじゃなかったと思うんです」

原文 (会話文抽出)

「つや子ちゃん」
「あなた、もう今夜はおやすみなさいよ、ね。あした来て、又リュクサンブールへでもつれて行ってあげるから……」
「お姉さま、帰るまえに、ちょっとこのひとのところへよって。――いい? 忘れない?」
「忘れない。――だから臥ていらっしゃい。いい子」
「旅先でもあるし、お母様もごたごたしたお気持なんだろうけれど、わたし、お金のことについては、はっきりしておいて頂きたいと思うわ。これまで、随分お母様とはいろんなことで云い合ったけれど、お金について今夜のようにおっしゃったのは、はじめてなんだから。これまで実際にあったことをあったとおりに考えて見て下されば、お母様は、わたしに対して、ただの一遍だって、出すだけは黙って出せ、と云うような金をお出しになったことはなかったと思うわ。そうお思いにならない?」
「わたしから、お金をねだったということがあったかしら。佃と結婚したとき、お母様は、自分の思うことをするのなら、経済的にもすっかり自分でやれっておっしゃったでしょう。あれは、今になってみればみるほどありがたかったと思っているんです。和一郎さんには、お母様少しちがうのよ。オートバイのときだって。ヴィクターのときだって。和一郎さんは、ねだって成功して来ているのよ。小枝ちゃんと結婚したい、とあのひとが云ったときお母様は、すきな結婚をするなら、何でも自分でやれ、とおっしゃったかしら。――そうじゃなかったろうと思うんです」

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