宮本百合子『道標』「――どうでした」…

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「で？」
「Μ・Х・Т、さすがだなって思ったっしょ？」
「で、吉見さん、どうだった？」
「んー」
「俺は基本的に、何でもいきなり感動しないことに決めてるんだ」
「へぇー。じゃ、今日のΜ・Х・Тはどうだ？やっぱ感動しないってことか？」
「それが困るんだよ！」
「ムカつくけど、嘘はつけねえしな」
「じゃあ感動したんじゃねえか？」
「芝居すげえ面白いかもしんないな。客と舞台、こんなに息ぴったりなんてさー。ヤベーくらいだな…」

原文 (会話文抽出)

「――どうでした」
「М・Х・Тだけのことはあると思われたでしょう」
「吉見さん、感想はどうです」
「ふーむ」
「わたしは、大体、ここでは、いきなり何にでも感服しないことにしたんです」
「なるほどね――ところで、今夜のМ・Х・Тはどうです――やっぱり感心しないことにしておきますか」
「それが困るのさ！」
「くやしいけれど、嘘はつけませんからね」
「じゃ、感服したんじゃないですか」
「もしかしたら芝居だけが面白いんじゃないのかもしれないわ。見物と舞台と、あんなにいきがあうんですもの――独特ねえ……何て独特なんでしょう！」
「佐々さんは、そう思いましたか」

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