宮本百合子 『帆』 「私のその青年との恋愛は、清田によって満さ…

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「私のその青年との恋愛は、清田が満たしてくれなかった美の感情があの人に溢れたとでもいうんでしょうか。――私自身最初から、それは自覚していたのでその男の人に他に好きな女ができた時、やっと役割が終わったような気がしましたよ」
「なかなか浮気ね」
「あなただって35,6になったら、変わりますよ。自分の浮気を抑えようとしているうちはまだ浮気は小さい。私なんかは人間は浮気にできてると考えてますよ」
「だからさ、そんなことは人によるのよ、私だって36になったけど、そんな気は一度も起きたことないもん」
「誰でも世間一般のモラルに捕らわれているうちは、そういう自由な境地には入れないんですよ」
「私、世の中で自分ほど面白いものはないと思いますね。自分のこと話すんだったら、いくら話しても飽きませんからね」
「あの人は告白病にかかってるんです」
「あの人は、あの告白病で雑誌を潰してるんですよ。先もあの人が国に帰っていた間に清田さんが他の女の人と手紙をやり取りしたって大喧嘩になって、それを雑誌に書いて、それで破局しちゃったでしょ。今度だってあなた、変な若い男と何があって、それをまた雑誌で告白して、雑誌を台無しにしちゃったんですもの」

原文 (会話文抽出)

「私のその青年との恋愛は、清田によって満されなかった美の感情がその人に向って迸ったとでも云いますか。――私自身始めっから、それは自覚していましたからその男のひとがほかに好きな女の出来た時、やっと役目の済んだような気がしましたよ」
「なかなか浮気ね」
「あなただって三十五六になって御覧なさると、変りますよ。自分の浮気を押えようとしているうちはまだ浮気は小さい。私なんぞは人間は浮気に出来ているものだと思ってますね」
「だからさ、そんなことは人によって違うんですよ、私だって三十六になったけれど、そんな気は一遍も起りゃしませんよ」
「誰でも小道徳に捕われている間は、そういう自在な境涯へは入れないんですよ」
「私世の中に自分ほど面白いものはないと思いますね。自分のことを話すのだったら、どんなに話したって飽きることはありませんからね」
「あの人は告白病にかかってるんです」
「あのひとは、あの告白病で雑誌をつぶしているんですよ。先もあのひとが国へ帰っていた間に清田さんがほかの女の人に手紙をやったって大層な喧嘩になって、それを雑誌へ書いて、うんと断わられてしまったでしょう。今度だって貴女、変な若い男と何だかで、それをまた雑誌へ告白し、雑誌を駄目にしちまったんですもの」

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