宮本百合子 『高台寺』 「そらもう桃龍はんは、何でもようでけるさか…

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青空文庫図書カード: 宮本百合子 『高台寺』

現代語化

「そりゃあもう桃龍さんってば、何でもできちゃうから、遅れてきても問題ないでしょう」
「嘘ぉ」
「本当によそお師匠さんのあの時の顔！ 笑えて笑えてしょうがなかったわ。――『嘘ぉ』なんてことよく言ったわ」
「――近くで見たら、その顔、もう化け物よ」
「嫌らしい言い方しないでよ。踊ってる間、私たちの顔めちゃくちゃだったわ……痛いわ痛い痛いって叫んでた」
「……何それ？」
「ワセリン」
「――よく思い付くなあ」
「桃龍さんの泣き顔」
「ゲンコツさんと蕪さん」
「ゲンコツさんと蕪さん」
「上手いこと言うわね」
「……いいものを見せてあげましょうか」

原文 (会話文抽出)

「そらもう桃龍はんは、何でもようでけるさかい、遅れて来ても大事おへんやろ」
「うーそぅ」
「ほんまにあのときのお師匠はんの顔！　笑えて笑えてかななんだわ。――『うーそぅ』ちゅうなこと、よう云わはったわ」
「――近くで見たら、その顔、まあ化物やな」
「いやらしおっしゃろほんまに、踊のある間、あてら顔滅茶苦茶やわ……痛い痛いわ、荒れて」
「……何や、それ」
「ワセリン」
「――ようとれるな」
「桃龍はんの泣き面」
「ゲンコツぁんと蕪はん」
「ゲンコツぁんと蕪はん」
「上手いな」
「……ええもん見せたげまひょか」

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