宮本百合子 『街』 「作さんも、おかみさん貰えばいいのに――」…

青空文庫現代語化 Home書名リスト宮本百合子 『街』

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。 正しく現代語化されていない可能性もありますので、必ず原文をご確認ください。


青空文庫図書カード: 宮本百合子 『街』

現代語化

「作さんも、奥さんもらえばいいのに――」
「ふん――何してるのかねえ――なに、この家だって、まず変てこりんな洋館みたいなのにしちゃって、小洒落た和室にしてみたら、いくらバラックだって、この界隈のことだから、いい女性のお客さんが借りてくれるよ。――しょうがないよ、半年も看板下げてるんだから。何より評判が悪いよね」
「だって書生さんなんかより外国人の方がいいじゃない。お金持ちらしいし」
「何を言ってるの!」
「だってさ。出入りしてるうちにウメちゃんの顔なんて飽き飽きしてるのに、キャラメル一つ買って来ないんだから」
「第一、話が合わないじゃない」
「ほら、そろそろおばあさんの定番が始まったよ」
「本当よ。嘘だと思うなら見てごらん。私たちなんて、たいていその人の目を見れば、腹で何を考えてるかわかるでしょ。2階の外人さん、こないだもどんな気持ちでいるのか探ろうと思って、台所へ水汲みに来た時に世間話したのよ。話しながら一生懸命目を見てたけど――困っちゃった。あの時ばかりは変てこりんに青いだけだったの――本当に――あまり青くて気持ち悪くなっちゃって、やめちゃった」
「ふふふふ、おかしなおばあさん。2階でくしゃみしてるわよ、今」
「ちょっと! 来ますよ」
「ふふふふ……」
「あーあ」
「もう何時?」
「日が短いときだから、4時1分くらいかな」
「女性の外人さんですよ、よその」
「どう、おばあさんお寿司でもおごっちゃおうか」
「そうねぇ」
「――その着物、さらだもの」
「おばあさんにとっては、10回目でもさらだからいいのよ――ね、本当にどうするの? 私はこれから帰ってもしょうがないから、寒かったらお寿司でも食べに行こうよ」
「いつもお前にばっかりお金を使わせて悪いのよ」
「ケチケチ言わないの。――じゃちょっと言ってくるわ」
「まあ、細い靴。よくそんな体でこんな靴はけるよね」
「子供の頃から締めつけてるんだよ――見かけだけじゃしょうがないよ」
「恥知らずだから、手を洗うことすら知らないんだからね」
「――……いい具合に風が収まってきた……」

原文 (会話文抽出)

「作さんも、おかみさん貰えばいいのに――」
「ふん――何してるんだか――なに、この家だって、第一変てこれんな洋館まがいになんかしないで、小気の利いた日本間にしといて御覧、いくらバラックだって、この界隈のこったもの、女一人位のいい借り手がつくのさ。――仕様がありゃしない、半年も札下げとくの、第一外聞が悪いやね」
「だって書生さんなんかより異人さんの方がよかないの、金廻りがいいそうだもの」
「どうして!」
「とてもだよ。出たり入ったりにうめの顔飽きる程見てたって、キャラメル一つ買って来るじゃないからね」
「第一、気心が知れやしない」
「ほーら、そろそろおばあさんの第一が始まった」
「本当だよ、嘘だと思ったら見て御覧、我々なら大抵まあその人の眼つきを見りゃ、腹で何思ってるか位、凡その見当はつくじゃないか。二階の異人さん、こないだも私、どんな気でいるのかさぐってやれと思って、台所へ水汲みに来た時、世間話してやったのさ。喋りながら一生懸命眼を見てやるんだが――困ったねあのときばかりゃ、お前ただ変てこりんに碧いばっかりでさ――本当に――余り碧いんでおしまいにゃ気味が悪くなって引下っちゃった」
「ふふふふ、おかしなおばあさん、二階で嚏してるわよ、今頃」
「ちょっと! 来ますよ」
「ふふふふ……」
「あーあ」
「もう何時?」
「日が短い最中だね、四時一寸廻った頃だろう」
「女の異人さんですよ、よその」
「どう、おばあさんお鮨でもおごろうじゃあないの」
「そうさねえ」
「――その着物、さらだね」
「おばあさんにゃ、十度目でもさらだから始末がいいわ――ね、本当にどうする? 私これからかえったって仕様がないから、冷たくってよかったらお鮨でも食べようじゃないの」
「いつもお前にばっかり散財かけてすまないようだね」
「水臭いの。――じゃ一寸云って来るわよ」
「まあ、細い靴、よくあの体でこんな靴はけるもんね」
「子供んちから締めてあるのさ――見かけばかりでは仕様がありゃしないよ」
「はばかりから出ても手を洗うこと一つ知らないんだからね」
「――……いい塩梅に風が落ちた……」

青空文庫現代語化 Home書名リスト宮本百合子 『街』


青空文庫現代語化 Home リスト