宮本百合子『明るい海浜』「餌がないのかしら」…

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現代語化

「エサがないのかな？」
「百代さん、今朝あげた？」
「よし、俺が見るよ」
「猫が入ったよ」
「何？さっきの何？」
「この紐、何するんだい」
「紐じゃないよ」
「紐だよ」
「馬の尻尾だよ」
「ふーん、本当？どこから持ってきたの？」
「抜いてきたんだよ」
「――嘘つき！蹴るよ」
「馬の脚は横に曲がりませんよ。くすぐったがってフッフッフッって笑うよ」
「みんな紅茶飲まない？」
「賛成！」
「どうせ、エビだろうね」
「その通り」
「エビにするなんて洒落てる！」
「でも、本当に、海老なかったのかな？」
「岡本さん、お昼何にする？エビフライはどう？」
「フライ、フライ！」
「これ――海老？」
「違うよ、こんな海老あるわけないじゃん」
「海老じゃないぞ」
「何だ？」
「生憎、海老が切れてしまったのでエビを使わせていただきました」
「おい、うらなりだね」
「スイカはとれないってさ」
「忠一さん、お茶お入れしましょうか？」
「ワッハッハ」
「やめてよ」

原文 (会話文抽出)

「餌がないのかしら」
「百代さん、あなたけさやってくれた？」
「よし、僕が見てやる」
「猫が通ったんだよ」
「何？　え、今のなに」
「何するんだい、この糸」
「糸じゃないよ」
「糸だい」
「馬の尻尾だよ」
「ふーむ、本当？　どこから持って来たの」
「抜いて来たのさ」
「――嘘いってら！　蹴るよ」
「馬の脚は横へは曲りませんよ。擽ったがってフッフッフッって笑うよ」
「みんな紅茶のみたくない？」
「賛成！」
「何にしろ、蝦姑だろうね」
「全くさ」
「蝦姑にするたあ洒落くせえ！」
「でも、本当に、海老なかったのかしら」
「岡本さん、おひる、何にしましょう、海老のフライどう？」
「フライ、フライ！」
「これ――海老？」
「違うよ、こんな海老あるもんか」
「海老じゃないぞ」
「何だい」
「生憎海老が切れましたから蝦姑にいたしました」
「おい、うらなりだね」
「西瓜糖はとれないってさ」
「忠一さま、お茶さし上げましょうか」
「ワッハッハ」
「およしなさい」

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