宮沢賢治 『マリヴロンと少女』 「先生どうか私のこころからうやまいを受けと…

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青空文庫図書カード: 宮沢賢治 『マリヴロンと少女』

現代語化

「先生、どうか私の心からの敬意を受け取ってください」
「敬意を受けるのは、あなたも同じです。なぜそんなに暗く落ち込んでいるのですか」
「私はもう死んでもいいんです」
「どうしてそんなことをおっしゃるんですか。あなたはまだお若いでしょう」
「いや、私の命なんかどうでもいいんです。あなたが、もっと素晴らしいお方になるために必要なことなら、私は100回でも死にます」
「あなたこそ素晴らしいじゃないですか。あなたは素晴らしい仕事であちらに行かれるでしょう。それは私よりはるかに偉大な仕事です。私はほんの頼りなくて、10分とか15分の声のひびきだけの人生です」
「いや、違います。先生はここの世界やみんなをもっと美しく素晴らしいものにするお方です」
「ええ、それを私は望みます。でもそれはあなたも同じでしょう。正しく清く働く人は、時間の向こうに1つの大きな芸術を築くのです。ごらんなさい。向こうの青い空の中を1羽の白鳥が飛んでいきます。鳥は飛んだ後に必ず軌跡を残していくのです。誰もそれを見ないかもしれませんが、私は見えます。同じように私達もみな、その後に1つの世界を作り上げていくのです。それがすべての人にとって一番崇高な芸術なんです」
「でも、あなたは高く光の空へと昇っていきます。草も花も鳥も、みなあなたを讃えて歌います。私は誰にも知られず、深い森の中で朽ち果ててしまうんです」
「それはあなたも同じです。すべて私に訪れて、私を輝かせるものは、あなたをも輝かせます。私に与えられるすべての賛辞は、そのままあなたにも贈られるんです」
「私を教えてください。私をあなたのもとに連れて行ってください。私はどんなことでもします」
「いいえ、私はどこにも行きません。あなたは考える場所に、いつでも私はいます。すべて真実の光の中にいる人々は、共に生きて共に進むのです。いつでも一緒にいるのです。でも、私はもう帰らないといけません。お日様がだいぶ離れてしまいました。百舌が鳴き始めました。では。ごきげんよう」

原文 (会話文抽出)

「先生どうか私のこころからうやまいを受けとって下さい。」
「うやまいを受けることは、あなたもおなじです。なぜそんなに陰気な顔をなさるのですか。」
「私はもう死んでもいいのでございます。」
「どうしてそんなことを、仰っしゃるのです。あなたはまだまだお若いではありませんか。」
「いいえ。私の命なんか、なんでもないのでございます。あなたが、もし、もっと立派におなりになる為なら、私なんか、百ぺんでも死にます。」
「あなたこそそんなにお立派ではありませんか。あなたは、立派なおしごとをあちらへ行ってなさるでしょう。それはわたくしなどよりははるかに高いしごとです。私などはそれはまことにたよりないのです。ほんの十分か十五分か声のひびきのあるうちのいのちです。」
「いいえ、ちがいます。ちがいます。先生はここの世界やみんなをもっときれいに立派になさるお方でございます。」
「ええ、それをわたくしはのぞみます。けれどもそれはあなたはいよいよそうでしょう。正しく清くはたらくひとはひとつの大きな芸術を時間のうしろにつくるのです。ごらんなさい。向うの青いそらのなかを一羽の鵠がとんで行きます。鳥はうしろにみなそのあとをもつのです。みんなはそれを見ないでしょうが、わたくしはそれを見るのです。おんなじようにわたくしどもはみなそのあとにひとつの世界をつくって来ます。それがあらゆる人々のいちばん高い芸術です。」
「けれども、あなたは、高く光のそらにかかります。すべて草や花や鳥は、みなあなたをほめて歌います。わたくしはたれにも知られず巨きな森のなかで朽ちてしまうのです。」
「それはあなたも同じです。すべて私に来て、私をかがやかすものは、あなたをもきらめかします。私に与えられたすべてのほめことばは、そのままあなたに贈られます。」
「私を教えて下さい。私を連れて行ってつかって下さい。私はどんなことでもいたします。」
「いいえ私はどこへも行きません。いつでもあなたが考えるそこに居ります。すべてまことのひかりのなかに、いっしょにすんでいっしょにすすむ人人は、いつでもいっしょにいるのです。けれども、わたくしは、もう帰らなければなりません。お日様があまり遠くなりました。もずが飛び立ちます。では。ごきげんよう。」

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