宮沢賢治 『饑餓陣営』 「何じゃ、そうぞうしい。」…

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青空文庫図書カード: 宮沢賢治 『饑餓陣営』

現代語化

「何だよ、騒がしいな」
「閣下の勲功は実に世界中に輝いています」
「ふん、それはいいよ」
「閣下の名誉はそのまま私たちの名誉です」
「うん。それはいいよ」
「閣下の勲章はどれも本当に立派です。私たちは閣下の勲章を拝見するたびに感激して涙が出たりお腹が鳴ったりするんです」
「ふん、それはそうだろうな」
「ところが私たちはまだ残念ながら、閣下の勲章をじっくりと拝見する機会に恵まれていないので」
「それはそうだ、今までは忙しかったからね」
「閣下。この機会にぜひ私たち全員にはっきりと見せていただきたいものです」
「それはいいよ。どの勲章を見たいんだい」
「一番大きいヤツから」
「これが一番大きいんだ。ロンテンプナルール勲章だ」
「これはどの戦役で受け取ったんですか」
「インド戦争だ」
「この真ん中の青いところは本当の砂糖ですか」
「本当の砂糖だよ」
「本当に立派ですね」

原文 (会話文抽出)

「何じゃ、そうぞうしい。」
「閣下の御勲功は実に四海を照すのであります。」
「ふん、それはよろしい。」
「閣下の御名誉は則ち私共の名誉であります。」
「うん。それはよろしい。」
「閣下の勲章は皆実に立派であります。私共は閣下の勲章を仰ぎますごとに実に感激してなみだがでたりのどが鳴ったりするのであります。」
「ふん、それはそうじゃろう。」
「然るに私共は未だ不幸にしてその機会を得ず充分適格に閣下の勲章を拝見するの光栄を所有しなかったのであります。」
「それはそうじゃ、今までは忙がしかったじゃからな。」
「閣下。この機会をもちまして私共一同にとくとお示しを得たいものであります。」
「それはよろしい。どの勲章を見たいのだ。」
「一番大きなやつから。」
「これが一番大きいじゃ。ロンテンプナルール勲章じゃ。」
「これはどの戦役でご受領なされたのでありますか。」
「印度戦争だ。」
「このまん中の青い所はほんもののザラメでありますか。」
「ほんとうのザラメとも。」
「実に立派であります。」

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