林不忘『寛永相合傘』「こ、こ、ここへお眼をとめられい。」…

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青空文庫図書カード: 林不忘『寛永相合傘』

現代語化

「おいおい、ここ見てみてよ。」
「丁子乱れ、な、丁子乱れがあるぞ。丁子乱れは番鍛冶一文字に多いって聞くから、この刀は、誰が何と言おうと、これは粟田口だな。」
「安斎さん、粟田口ですか？」
「ふむ。粟田口かな。」
「なるほど。言われてみれば乱れだけど、ちょっと変わってるな。俺の見る限り、どうも青江物じゃないっすか、これ。」
「でも――。」
「でも――。」
「でも――何だよ？」
「でも、」
「でも、刃文といい、そんなに古くない切込みの形といい、ここは絶対に粟田口だな。しかも国光あたりじゃないっすかね。まず間違いないと思います。」

原文 (会話文抽出)

「こ、こ、ここへお眼をとめられい。」
「丁子乱れ、な、丁子みだれがあろう。丁子乱れは番鍛冶一文字に多しと聞くからには、この一刀は、誰が何と言おうと、これは粟田口だ。」
「安斎、粟田口だな。」
「ふうむ。粟田口かな。」
「なるほど。言わるるとおり乱れは乱れじゃが、ちと逆心が見える。拙者の観るところ、どうも青江物じゃな、これは。」
「しかし――。」
「しかし――。」
「しかし――何じゃ？」
「しかし、」
「しかし、刃文と言い、さまで古からぬ切込みのあんばいと言い、何とあってもここは粟田口、しかも国光あたりと踏むが、まず恰好と存ずる。」

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