林不忘 『元禄十三年』 「気の毒だな。添役が、そんなにせんでもええ…

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青空文庫図書カード: 林不忘 『元禄十三年』

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「あいつが副官でよかったよ。本役だったらもっと大変だっただろうな。岡部殿からは、この扇箱だけ――ふふふ、二重底だろう。見てみ」
「ただの扇箱だけど――」
「使いの者は?」
「何かっていう用心棒でした。逃げるように帰って行きました――」
「何て言ってた?」
「その、岡部美濃守様が天奏饗応役を任命されたんで、殿中でよろしくご挨拶を――ってことでした」
「ふーん。からかってるんだろう、この上野を」
「へー、殿様、ご機嫌いかがですか」
「大変なことになったよ。平茂、言いつけるんだけどさ、あの女の子、行火代わりだったやつ、ははは、褒めてもらえるかな。見てるだけでブルブル震えるような奴がいたんだ」
「岡部殿は、扇箱一つで殿中で挨拶できる、って言ってるんだよ。虫がいい! 順番があるだろ、順番が」
「相手が悪いんで、心配なんだよ」

原文 (会話文抽出)

「気の毒だな。添役が、そんなにせんでもええに。本役の岡部殿からは、この扇箱ひとつ――ふふふ、二重底であろう。見い。」
「ただの扇箱で――。」
「使いの者は?」
「何とか申す用人でございました。逃ぐるように引き取りましたが――。」
「口上をきいておるのだ、口上を。」
「口上は、その、このたび、岡部美濃守様が天奏饗応役を仰せつけられましたについて、殿中よろしくお引廻しのほどを、という――。」
「よい。嘲弄する気であろう、この上野を。」
「へっ、殿様、御機嫌伺い。」
「一大事出来。平茂、御注進に。じつぁね、例の女の子、行火がわりの、へへへ、賞めてやっていただきやしょう。見ただけで、ぶるるとくるようなやつが、殿様、みつかりやしたんで。」
「扇箱一つで、殿中引廻し、か。虫のいい! これ、進物の額をいうのではない。が、ものには順があるぞ、順が。」
「相手が悪いから、心配するのだ。」

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