林不忘 『丹下左膳』 「ちと無礼でござろう。誰にことわって、ここ…

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青空文庫図書カード: 林不忘 『丹下左膳』

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「ちょっと無礼ではございます。どなたの許可を得て、ここへ入って来られたのですか!」
「最後の鑿を打つまでは、人に見せないというのが、私の願いです。この山奥に籠もっているのもそのためです。ご存じでしょう?」
「いや、あなたに頼んだあの馬像ですが、どこに置く場所が決まったので、ついては、もうどれくらいできたのか、ちょっと見せていただこうと思ってつい……」
「これはこれ! 作阿弥殿。言葉が過ぎますぞ。芸熱心なのは結構ですが、殿のお前もわきまえず、あまり仕事に凝って、乱心でもされたようです」
「どこに置こうと、そんなことは私の知ったことではありません。早々出て行ってもらいたい」
「いや、許してください、許してください」
「護摩堂の守護として、長くあの前に飾っておくことに決めたのです、作阿弥」
「作阿弥殿。これには深いわけがあるのです。どういうものか、いつの御造営にも、あの護摩堂の壁が一番先に傷んで、たちまち落ちてしまいます。そこで、それに犠牲を捧げて、壁の祟りを鎮める気持ちと、かねては、この御修繕の儀式が無事に終わることを祈念して、あの護摩堂の壁へ、母と子と二人の人柱を塗り込めることになったのです」
「人柱ですか? 母と子の――」
「はい。そこで、その母子の亡骸を納める壁を、永遠に守り、かつ、見守るために、千里をゆくあなたの駒を、あの護摩堂の前に置くことに決めたのです。任は重いぞ、作阿弥! 母と娘の魂を鎮める、気高い神馬を彫り上げてくれ!」
「そういたしますと、そ、その、母娘の人柱というのは、もう決まりましたでしょうか」
「客分として、大切にもてなしてあります。本人たちは、人柱などとは夢にも知りません。私もまだ会ったことはありませんが……」

原文 (会話文抽出)

「ちと無礼でござろう。誰にことわって、ここへはいってこられた!」
「最後の鑿を打つまでは、人に見せぬというのが、わしの心願じゃ。この山奥へこもっておるのもそのため。ごぞんじであろう」
「いや、其方をわずらわしたその馬像を、どこへすえるか、場所が決まったによって、ついては、もうどのくらいできたか、ちょっと見とうなってナ、つい……」
「コレコレ! 作阿弥どの。言葉が過ぎようぞ。芸熱心はよいが、殿のおん前もわきまえず、あまり仕事に凝って、乱心でもされたか」
「どこへ置こうと、そんなことはわしの知ったことではない。早々出て行ってもらいたい」
「イヤ、許せ、許せ」
「護摩堂の守護として、長くあの前へ飾りおくことに決めたぞ、作阿弥」
「作阿弥どの。これには深いわけのあることなのじゃ。どういうものか、いつの御造営にも、あの護摩堂の壁がいちばん先にいたんで、たちまち落ちてならぬ。で、それに犠牲をささげて、壁のたたりを納めるこころと、かねては、この御修覆の儀の事なく終わるを祈念されて、あの護摩堂の壁へ、母と子と二人の人柱を塗りこめることになったのじゃ」
「人柱を? 母と子の――」
「うむ。そこで、その母子なきがらをのむ壁を、永遠に守り、かつ、見はるために、千里をゆく其方の駒を、あれなる護摩堂の前にすえようと一決したのじゃ。任は重いぞ、作阿弥! 母と娘のたましいをしずめる、気高き神馬を彫りあげてくれい」
「そういたしますと、そ、その、母娘の人柱というのは、もうきまりましたので」
「客分として、大切にもてなしてあります。本人たちは、人柱などとは夢にも知らぬ。わしもまだ会いはしませぬが……」

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