林不忘 『丹下左膳』 「しかし、おどろきましたな。私が見たときは…

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青空文庫図書カード: 林不忘 『丹下左膳』

現代語化

「でも、びっくりしましたよ。私が見たときは、あいつ、庭の下に立って、自分で燈籠に灯りをともそうとしていたんです。夕闇の庭に、誰かが立っているのが見えて。後ろ姿の肩のあたりに、見覚えがあったんで、「あの野郎が!」と思って、縁側から観察してたんですよ。そしたら振り返ってニタって笑った顔! 明かりに片方の頬が照らされてたんですけど、死んだはずのあの伊賀の暴れん坊だったんです。こりゃ、迷ったんだろうなと……」
「いや~、本当にびっくりしましたよ。私は、源三郎が不浄場から出て、手を洗ってるのを遠くからチラッと見ただけなんですけど、もうこの腰が、どうしても言うこときかなくて、ハハ。しょうがなく障子につかまって、やっとの思いでみんなに知らせに来たんです――」
「あなたも幽霊だと思ったんだ。どうして助かったのか知りませんけど、あんなことがあった後なのに何事もなかったように道場に住んでたんですから、本当に皮肉な奴で……私は、見かけた瞬間になんか腰が抜けて、地面にぺたりと座り込んじゃいました」
「ハハハ、腰が抜けたんだ」
「いや、そういう言い方をされると面白くない。実は、下から透かして、あいつに足があるかどうか、それを確かめたかったんです」
「幽霊じゃないかどうかをね。なるほど、ときによっては考え深い行動もされるんですね……」

原文 (会話文抽出)

「しかし、おどろきましたな。私が見たときは、彼奴め、庭の下に立って、手ずから燈籠に灯をいれるところでしたが、夕闇のせまる庭に、誰やら立っている者がある。うしろ姿の肩のあたりに、見おぼえがござったでナ、ハッと思って、縁側から眼をすえていると、ふり返ってニタと笑った顔! 明りに片頬を照らしだされたのを見ると、死んだはずの伊賀の暴れん坊ではござらぬか。さてはこいつ、迷ったなと……」
「イヤ、実にどうも、なんともかともおどろき入りましたテ。てまえは、源三郎めが不浄場から出て、手を洗っているところを遠くからチラと見たのですが、それでもうこの腰の蝶番が、どうしてもいうことをききませんようなありさまで、不覚ながら障子につかまって、やっとおのおののところへ注進に来ましたようなしだいでござりまして――」
「貴殿も幽霊と思われた組だな。どこをどうして助かったか知らぬが、あれから何事もなくずっと道場に暮らしていたような面つきでヒョコッと庭におりて水をまいていたのだから、まったくもって皮肉なやつで……まず拙者は、ひと目見るより早く、ペタリとすわった――」
「ハハア、腰を抜かして」
「イヤ、そう言ってしもうては、花も実もござらぬ。実は、下からすかして、彼奴に足があるかどうか、それをたしかめようと存じたので」
「幽霊か否かをナ。なるほど、ときにとって思慮ぶかい御行動……」

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