林不忘 『丹下左膳』 「旅は道づれ、世は情けてえことがありまさあ…

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青空文庫図書カード: 林不忘 『丹下左膳』

現代語化

「旅は道連れ、世は情け」
「お姉さん、お茶代置いとくよ。あの人(さむらい)の分も」
「いや、私の分まで置かなくていいです。そんなご配慮は結構です」
「固いこと言わないでよ。ちょっとした挨拶みたいなもんだよ」
「べらべらべらべらべらべら! それなら帰りましょう。私、ホントにあんたの気質が気に入ったわ。若いのにお目が高いわね。さすが武士様だわ……でも、私みたいな身分の低い者と一緒だと迷惑でしょうけど、それこそが旅は道連れ、べらべら……」
「荷物、持ちましょうか」
「やめて。これは主様からお預かりした大切な品だから。触れちゃいけない」

原文 (会話文抽出)

「旅は道づれ、世は情けてえことがありまさあ」
「オウ、姐さん、茶代はここへ置くよ。このお侍さんの分もナ」
「イヤ、私の分まで置いてもらうわけはない。どうぞ、さような心づかいは御無用に願いたい」
「そうおかたいことをおっしゃるもんじゃあござんせん。ナニ、ほんのお近づきのおしるし、ヘヘヘヘヘ、手前の志でございますよ」
「へらへらへったら、へらへらへ! へらへったら、へらへらへ――サア、めえりやしょう。あっしゃアね、真実、旦那の気性に惚れこみやした。実にどうも、お若いに似ずたいしたもので。さすがはお侍様……あっしみてえな下司な者と同道しやすのは、さぞ御迷惑ではござりましょうが、そこがソレ、ただいまもいう旅は道づれ、へらへったら、へらへら……」
「お荷物、お持ちやしょう」
「アイヤ、それは主君よりおあずかりの大切なお品。手を触れてはならぬぞ」

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