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青空文庫図書カード: 徳田秋声 『爛』

現代語化

「お柳さんの兄さんっていう人が田舎から出て来たから、急に話をつけることになったの。」
「へぇ、その兄さんが来たの？」
「違うよ、仲介してくれる人――弁護士だよ。」
「上手くいきそう？」
「ううん、どうかな。」
「これは、とても承知しませんよ。」
「でも、兄さんっていう人が田舎で役人をしてて、欲張りなの。お金次第で、どうでもなりそうなんだって。」
「それに、うちでは随分いい話してるよ。将来のためにいいように。」
「あのお嬢さんどうしたの？」
「ダメよ、とうとう物にならずじまいだって。」
「誰が、あんなおじいさんに引っ掛かるものか。それに、来てみて、家の汚いのにもうがいたでしょうよ。」

原文 (会話文抽出)

「お柳さんの兄さんという人が、田舎から出て来たもんだから、急に話をつけることになったの。」
「へえ、その兄さんが来たの。」
「いいえ、間へ入る人――弁護士よ。」
「うまく行きそう。」
「ううん、どうだか。」
「これは、とても承知しませんよ。」
「だけど、兄さんという人が、田舎で役人をしていて、欲張りなんですって。それがお金次第で、どうでもなりそうなんだと。」
「それに、宅じゃ随分綺麗な話をしているんだもの。先の身の立つように。」
「あのお嬢さんどうしたの。」
「駄目よ、とうとう物にならずじまいだと。」
「誰が、あんなお爺さんに引っかかるものか。それに、来てみて、家の汚いのに惘れたでしょうよ。」

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