薄田泣菫 『森の声』 「余りに高くなり過ぎて、どうにも心寂しくて…

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青空文庫図書カード: 薄田泣菫 『森の声』

現代語化

「どんどん高度が上がって、寂しくて仕方がないよ。それにあの雲のシワが鬱陶しい。雷でも落ちてこないかなあ。」
「ちっちゃいのもイヤになっちゃった。土の匂いが鼻につくよ。昨日を忘れる方法ってないのかな。」
「命にもちょっと飽きたような気がするな。ワシはどこに行ったんだろうな。良弁を落としたまま、まだ帰ってこない。待ってる間に千年の夏は終わってしまった。そんなに短い月日でもなかったような気がするけどな。」
「なんか言葉が欲しくなってきたよ。」

原文 (会話文抽出)

「余りに高くなり過ぎて、どうにも心寂しくてならない。それにあの雲の襞がうるさい。電光など落ちて来るといいのに。」
「背低なのも厭になつた。土の香が鼻につき過ぎる。きのふを忘れる術は無いものか知ら。」
「生命にも少し飽きたやうだ。鷲はどこへ往つたか知ら。良弁を落したままで、未だに帰つて来ない。待つてゐる間に千年の夏は経つてしまつた。余り短い月日でも無かつたやうだ。」
「何だか言語が欲しくなつて来やうだ。」

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